大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)2069 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人川添清吉上告趣意第一点について。

竊盗罪は物に対する他人の所持を侵し、それを自己の支配内におくことに依つて

成立するものである。従つて原判決としては、ABCの保管を侵したものであるこ

とを判示すれば足り、更に進んで被害物件の所有者の何人であるかまでも判示する

の必要はないのである。所論は竊盗罪の成立要件に関する独自の見解に基ずく立論

であつて、原判決には理由不備乃至審理不尽の違法はないのであるから、論旨は理

由がない。

同第二点について。

しかし、被告人の出頭せざりし場合においてのみ、その旨公判調書に記載を要す

るものであることは、旧刑訴法第六〇条第二項、第三号の明規するところである。

されば公判調書に右の記載がないときは、他に被告人の出頭せざりしことの証拠の

ない限り、被告人は当該公判廷に出頭したものと認むべきことは当然である。論旨

は理由がない。

同第三点について。

凡そ、被告人は公判廷において身体の拘束を受けるものでないことは、旧刑訴法

第三三二条の明定するところである。さればこの事を公判調書の記載事項としてい

ないことは当然である。それ故特に拘束を受けたとの証拠のない限り、公判調書に

何等の記載のないことは常に公判廷において拘束を受けていないものと認むべきで

ある。論旨は理由がない。

同第四点について。

記録を精査するに、原審挙示の証拠である原審における被告人の供述に依れば、

- 1 -

被告人等は所論のリヤーカーを持ち出した上、之に他の盗品である玄米等を積み込

み自宅に帰ろうとしたところ、その途中車輪破損の不測の事故のためリヤーカーを

小学校の倉庫から西南方二〇メートル余の路上に放置したものであることが認めら

れる。されば、竊盗罪の成立要件である他人の物の所持を侵し、之を自己の支配内

においたものである以上、既に所論リヤーカーに対する羅盗罪は既遂となつている

ことは明らかであるから、爾後犯人の都合によつて之を放置しても、竊盗罪の成立

には何等影響するところはないのである。されば原審が、挙示証拠に依つて所論リ

ヤーカーに対する判示竊盗の事実を認めたことは相当である。論旨は理由がない。

仍つて、刑訴施行法第二条及び旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決す

る。

此判決は全裁判官一致の意見である。

検察官 橋本乾三関与

昭和二四年六月一一日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!